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【解説】異例の起訴取り消し 高知・香南市官製談合事件

高知県香南市の公共工事の入札をめぐる情報漏えい事件で異例の起訴取り消しとなった男性課長が10日に会見を開き、心境を語りました。「同じようなことが起きないよう望む」という言葉、大変重く受け止めなければなりません。取材にあたっている京面アナウンサーです。

男性課長は逮捕直後から一貫して容疑の否認を続けていて、起訴が取り消される前の記者会見でも「ストーリーありきの捜査だった」と強調していましたので、捜査機関への怒りや失望といった感情が垣間見えました。

「起訴の取り消し」というのはかなり異例のことですね。

一般的に、今回のような最終的に贈収賄事件に発展するケースでは、警察と検察はかなり連携を密にして、事件捜査の着手にあたります。検察も、起訴をするからには有罪であることを法廷で立証しなければならない責任がありますし、地方検察庁だけでなく高等検察庁まで情報を共有したうえで摘発にあたります。

今回は、男性課長に一旦釈放が認められながら地検が同じ容疑で再逮捕したということもまた「異例」といえるんですが、そこに踏み切った地検からは捜査に対する「自信」も垣間見えます。

ただ結果的に、「課長を再逮捕した後、起訴したものの結果、起訴を取り消す」という“異例中の異例”とも言える事態となりました。背景にはどのようなことがあったのでしょうか。

はい、テレビ高知の捜査関係者への取材によりますと、元市議会議員の志磨村被告は逮捕後の取り調べに対し最低制限価格に近い金額を「男性課長から聞いた」と供述していましたが、その後「課長からではない」と供述を変えたということです。

2009年に裁判員裁判が始まり、取り調べの可視化が進むようになって以来、捜査機関は、「かつて“証拠の王様”とも表現されていた容疑者や被告の供述に頼る立証」から例えば、「事故現場のドライブレコーダー映像や事件現場の凶器など、客観的な証拠を積み上げての立証」に重きを置くようになりました。

今回の事件でもまた、捜査機関は何らかの客観的な証拠に基づいて男性課長を逮捕・起訴したはずですが、結果的に事件の構図が変わってしまいました。地検は「新たな事実が判明した」としていますが、供述の変遷は、事件の構図が変わる大きな要因のひとつになったと考えられます。

起訴取り消しについての捜査機関側のコメントです。高知地方検察庁の上田敏晴次席検事は「改めて証拠を精査した結果、有罪立証が困難と判断した。取り消しに至ったことは遺憾である」としています。また県警捜査二課の野村良課長は、「逮捕・取り調べは適正に行われた。起訴取り消しは厳粛に受け止め今後も客観証拠に基づいた適正な捜査を行っていく」としています。

県警・地検ともに現時点で男性課長への謝罪は予定していませんが、「裁判の推移を見ながら適正に対応していく」ということです。

その裁判ですが、初公判の日程が明らかになりました。

贈収賄の罪に問われている、元市議の志磨村被告と建設会社の元社長・北代被告の初公判は今月17日に高知地裁で開かれます。公判での最大の焦点は、事件のきっかけになった入札情報が「誰から・どのようにして漏えいされたのか」ということになります。

事件の全容解明とともに捜査の手法に問題が無かったのかという点も注目されることになります。

ところで香南市では、贈賄の罪で起訴されている北代被告から個人献金として10万円分の商品券を受け取ったとして、清藤真司市長が辞職願いを提出しました。

清藤市長は、「違法性はないが道義的・倫理的責任がある」と理由について述べました。また辞職のタイミングについては「男性課長の起訴の取り消しを一つの区切りと考えた」と話していました。香南市では前の市長も政治資金にからむ問題で辞職していて、今回、市民からは「恥ずかしい」という声もあがっていました。

市長は「情報漏えい事件には関与していない」と明言していますが、極めて高い透明性が求められる公共工事で情報の扱いが適切だったのか、公判の過程・結果を踏まえて行政も襟を正す姿勢が求められることになります。

課長がなぜ、起訴取り消しとなったのか。地検はこれまでに十分な説明を果たしていません。公判での立証過程や判決を踏まえてぜひ県民1人1人に司法というものをしっかりと示して頂きたいと思います。